『へりくだる者に恵みを』
聖書箇所 ヤコブ4：7～10
4:7 ですから、神に従いなさい。そして、悪魔に立ち向かいなさい。そうすれば、悪魔はあなたがたから逃げ去ります。
4:8 神に近づきなさい。そうすれば、神はあなたがたに近づいてくださいます。罪ある人たち。手を洗いきよめなさい。二心の人たち。心を清くしなさい。
4:9 あなたがたは、苦しみなさい。悲しみなさい。泣きなさい。あなたがたの笑いを悲しみに、喜びを憂いに変えなさい。
4:10 主の御前でへりくだりなさい。そうすれば、主があなたがたを高くしてくださいます。
説教要旨
4章において、ヤコブは「教会の交わり」を続けて念頭に置きつつ、「高ぶり」について述べています。前回は「世を愛する高ぶり」を見ましたが、その教えの最後に「神は、高ぶる者を退け、へりくだる者に恵みをお授けになる。（v6）」との箴言の言葉を引用し、今日の箇所において「ですから（v7）」と続け、「神に従いなさい。そして、悪魔に立ち向かいなさい。（v7）」と命じています。「従う」とは、「下に身を置く」との言葉です。「そして（v7）」、悪魔に立ち向かうように命じています。悪魔は、私たちを高ぶらせ、神から引き離し、自分を中心に生きるよう強く働きかけます。私たちは、神の下に身を置き、そして、断固とした態度で悪魔に立ち向かうのです。その時、悪魔とその誘惑は逃げ去っていくのです。（v7）
悪魔は、私たちを神から引き離そうとするので、ヤコブは神に近づくよう続けて命じます。（v8）私たち人間は、自らの罪故に、聖なる神に近づくことができない者です。しかし、神は、ご自身の独り子イエス・キリストの十字架の死と復活の贖罪により、キリストを信じる私たちの罪を赦し、私たちと和解し、私たち一人ひとりが神に近づき、神との交わりの内に生きる者として下さいました。その神に、御言葉と祈りの中で近づくのです。そのような歩みに、神はいよいよ近づき、身近にともにいて下さるのです。続いて、神に近づくにあたり、自らをきよめるよう、継続的な悔い改めを命じます。「手を洗いきよめなさい（v8）」とは、外的な罪の行ないに身を汚すことがないようにということ、「心を清くしなさい（v8）」とは、心を世の栄誉や富に寄せるのではなく、神に一つ向けることです。そして、さらに深く悔い改めを迫ります。「苦しめ、悲しめ、泣け、笑いを悲しみに、喜びを憂いに変えよ」と、驚くべきことを命じます。（v9）これは、主イエスの「平地の説教」が基となっているでしょう。（ルカ6：21、25）「苦しむ、悲しむ、泣く」は、神に対する罪の悔い改めの姿です。自らの弱さと罪の悲惨さを知り、認め、苦しみ、悲しみ、涙を流すことです。ヤコブは、笑いや喜びを否定しているのではありません。でも、神の前に自らの真の姿である弱く罪の悲惨の姿と向き合うことを避け、目に見えるものを追い求め、空しい笑いと喜びの中に生きている者は、その偽りの表面的な笑いと喜びを、罪を悲しむ悲しみと憂いに変えるよう告げているのです。救いの祝福は、自らの惨めさと神の憐れみを知ることによるからです。
最後にまとめます。「主の御前でへりくだりなさい。そうすれば、主があなたがたを高くしてくださいます。（v10）」「人の前で」ではなく「主の御前で（v10）」、自分が被造物であり、弱き罪深き惨めな存在であることを認め、神ご自身と神の救いの恵みに拠り頼むのです。そうした時に、主が「高くしてくださる」のです。「高くしてくださる」とは、様々な意味が含まれる大きな祝福の言葉でしょう。神の御前に罪赦され、永遠のいのちが与えられる祝福です。神の臨在の中に置かれ、神の御心に生きることができる、即ち、世の欲に支配されず神を愛し、争いの中ではなく謙遜に人との平和の中を歩み、乏しき中ではなく働きが守られ一つひとつの必要が備えられ感謝し、神の栄光を現わしていく祝福です。そして、死を恐れ歩むのではなく、永遠の裁きを免れ、神の住まう天の御国に入れられる祝福です。（Ⅰペテロ5：5～10、ローマ8：28、箴言5～10、創世記50：20）但し、神の祝福を得るために神に従うのではありません。目に見える祝福があろうと、なかろうと神が神であられる故に従うのです。そこにこの世においてそして次の永遠の世において神の祝福が伴ってくるのです。
今、私たちの歩みは、どうでしょうか。自分の悟りに頼らず、神の下に身を置き、神が下さる今日と永遠の祝福の内を歩ませていただきましょう。そして、いよいよ神を知り、いよいよ神の素晴らしさを証する者として歩ませていただきましょう。