聖書箇所 ヨハネ21：15～17
21:15 彼らが食事を済ませたとき、イエスはシモン・ペテロに言われた。「ヨハネの子シモン。あなたは、この人たちが愛する以上に、わたしを愛していますか。」ペテロは答えた。「はい、主よ。私があなたを愛していることは、あなたがご存じです。」イエスは彼に言われた。「わたしの子羊を飼いなさい。」
21:16 イエスは再び彼に「ヨハネの子シモン。あなたはわたしを愛していますか」と言われた。ペテロは答えた。「はい、主よ。私があなたを愛していることは、あなたがご存じです。」イエスは彼に言われた。「わたしの羊を牧しなさい。」
21:17 イエスは三度目もペテロに、「ヨハネの子シモン。あなたはわたしを愛していますか」と言われた。ペテロは、イエスが三度目も「あなたはわたしを愛していますか」と言われたので、心を痛めてイエスに言った。「主よ、あなたはすべてをご存じです。あなたは、私があなたを愛していることを知っておられます。」イエスは彼に言われた。「わたしの羊を飼いなさい。
説教要旨
主イエスはご自身を否定したペテロを赦し、弟子として立ち直らせ告げました。「わたしの羊を飼いなさい」「わたしの羊」とは、主イエスを信じ主イエスに従う人たち、教会、教会の兄弟姉妹のことです。「飼いなさい」とは、羊飼いが羊を養い育てるように、教会の兄弟姉妹を養い育てること（牧会）を表していました。牧会の目指すところは、教会と兄弟姉妹一人ひとりが御言葉に養われキリストのいのちに豊かに生かされていくことです。（ヨハネ10：10）「わたしの羊を飼いなさい」とは、御言葉により信仰者を整える務めが委ねられている牧師、牧師が御言葉と祈りに専念できるように牧師とともに教会に仕えていく執事、子どもたちを救いと信仰成長に導く務めが委ねられている教会学校教師に向けられた言葉です。しかし、その者たちだけではなく、主イエスは「互いに愛し合う」ことを教えています。すべてのクリスチャンが互いに牧会し合っていく（相互牧会）のが教会です。すべてのクリスチャンが牧会を担う者であるのです。また、「わたしの羊」とは、広い意味ではまだ主イエスの愛を知らずに主イエスに従わずに歩んでいる世も表しています。私たちは遣わされていく持ち場でも人々を愛し主イエスに導く牧会者として立てられているのです。
では、私たちはどのように牧会（養い育てる）の務めをなしていくのでしょうか。主イエスを愛することは兄弟姉妹と隣人を愛すること（養い育てること）に現されていくのです。主イエスを愛するとは、教会を愛すること、教会の兄弟姉妹を愛すること、教会に連なり互いに養い養われること、またこの世の人々を主イエスのもとに導いていくことです。また「わたしの羊」と「わたしの」と仰せられています。私たちが愛する兄弟姉妹と隣人は、主イエスの羊であるのです。イエス・キリストが愛し、その人のために十字架で死なれたのです。イエス・キリストがその兄弟姉妹・隣人の大牧者として導かれているのです。その主イエスの羊を愛していくのです。「愛は人を育てます（建築します）（Ⅰコリント8：1）」私たちは、兄弟姉妹が主イエスにあって建て上げられていくように、成長のために仕えていくのです。赦し、戒め、楽しく語り、苦言を呈していきます。ある時には具体的に何かをし、ある時には主イエスと聖霊の働きに委ね待ちます。ペテロは主イエスの愛と牧会を受けて、次のように記しています。（Ⅰペテロ5：1～3）「卑しい利得を求めてではなく（Ⅰペテロ5：2）」とは、自分の称賛や自分の安心のためではなく、ただただ相手が主イエスにあって成長し主イエスに繋がっていくことができるよう仕えていくのです。「支配するのではなく（Ⅰペテロ5：3）」立場や力をもって相手をどうこうしようとするのではなく、怒りの言葉や態度で相手を変えようとするのではなく、相手を尊重し相手が自ら喜んで信仰に立った決断と歩みができるように仕え導いていくのです。そして「飼いなさい」「牧しなさい」は、いずれ継続的な意味合いがあります。一足飛びにというのではなく、継続的に忍耐強くその姿勢を取り続けていくのです。
では、兄弟姉妹・隣人への愛の原点、牧会の原点（原動力）は何でしょうか。イエス・キリストが私たちを愛してくださっておられることです。十字架に架かり死なれ私たちを赦し、復活され決して見捨てることなく忍耐強く私たちを導いてくださっているイエス・キリストの愛です。私たちの心は相手のちょっとした言葉や態度で波立ちます。何と自分のことしか考えていないことか、何故感謝がないのかとの否定的な思いに満ちることがあります。でも、神の前に頑なで、感謝することなく、自分中心に歩んでいた私たちを愛し、イエス・キリストは十字架で死なれ、今も弱き罪深き私たちとともに歩み続けてくださっておられます。そのイエス・キリストの愛の中に自分が置き直され、「わたしの羊を飼いなさい」との主イエスの御声に聴き、再び牧会の務めに立たせていただくことができるのです。